南アフリカは、金やプラチナなどの鉱物資源を基盤に発展し、自動車や製造業、農業、観光まで幅広い産業を持つ経済大国である。
特にヨハネスブルグを中心とする金融業やケープ州のワイン産業は世界的な評価を受け、観光も国際的な注目を集めている。
しかし一方で、地域格差や電力不足といった課題も存在し、持続的成長の鍵は制度改革と資源活用のバランスにかかっている。
多様性を強みに変える南アフリカ経済は、今後も大陸の牽引役であり続けるだろう。

鉱物資源が築いた産業基盤
南アフリカの経済を語る上で、鉱業は欠かすことのできない基盤である。
金、プラチナ、ダイヤモンド、マンガン、クロム、バナジウムといった貴重な鉱物資源が豊富に埋蔵されており、世界でも有数の鉱物輸出国としての地位を確立している。
とくに金鉱山はかつて世界最大規模を誇り、ヨハネスブルグの発展はこの金鉱ラッシュと密接に結びついている。
現在では、世界のプラチナ供給量の70%以上を占めるなど、依然として鉱業は輸出収入の大きな柱であり続けている。
鉱業はGDPの約7%、輸出の3割以上を占めており、国内の雇用創出にも寄与している。
製造業と自動車産業の成長
南アフリカは製造業も発展しており、とりわけ自動車産業が堅調である。
トヨタ、BMW、フォルクスワーゲン、メルセデス・ベンツといった国際メーカーが現地生産拠点を持ち、年間数十万台規模の自動車が国内および周辺諸国に向けて出荷されている。
これらの拠点は単なる組み立てにとどまらず、現地調達率の向上や技能育成など、南アフリカの産業技術基盤の成長にも貢献している。
また、鉄鋼や化学、建材、食品加工といった他の製造業分野でも投資が進んでおり、内需と輸出の両輪で経済を支えている。
南アフリカはサハラ以南アフリカで最も工業化が進んだ国のひとつとされている。
農業と食品産業の広がり
多様な気候と肥沃な土地を持つ南アフリカは、農業にも強みを持つ。
特にワイン、柑橘類、トウモロコシ、ブドウ、リンゴ、洋ナシ、アボカドなどの果物が国内外で高い評価を受けている。
西ケープ州はワインの名産地として国際的に知られており、フランスのボルドーやイタリアのトスカーナにも匹敵するワインツーリズムの拠点となっている。
農業は全体のGDPに占める割合こそ小さいが、地方経済や雇用においては極めて重要な役割を担っている。
また、アグリビジネスとの連携によって食品加工業が成長しており、農産物の付加価値を高める方向への産業転換も進められている。
金融・サービス業の地域ハブ
ヨハネスブルグを中心とする南アフリカの金融・保険業界は、アフリカ大陸全体においても最も高度な制度と規模を誇る。
Standard Bank、FirstRand、Absaなどの大手金融機関は、南部アフリカだけでなくナイジェリア、ケニアといった他地域にも展開しており、南アフリカを拠点とする多国籍企業の存在感は非常に大きい。
また、不動産、ICT、医療、教育といったサービス産業の裾野も広がっており、富裕層および中間層の増加に伴い、都市部では先進国に近いビジネス環境が形成されている。
金融市場の安定性と透明性は、国外からの直接投資にとっても魅力的な要素となっている。
観光業がもたらす国際的接点
観光業も南アフリカ経済の重要な柱のひとつであり、国内総生産の約3%を占めている。
サファリや自然景観、ワイン観光、歴史遺産などを目的とした訪問者が、毎年数百万人単位で南アフリカを訪れている。
観光はホテル、交通、小売、飲食といった他産業との結びつきが強く、広範囲にわたる経済波及効果を持っている。
また、コロナ禍以降も着実に回復しつつあり、特にアジア、ヨーロッパ、中南米からの旅行者数は増加傾向にある。
持続可能な観光やエコツーリズムへの取り組みも強化されており、雇用の質と地域活性化のバランスを取る努力が続いている。
地域経済の格差と課題
こうした豊かな産業構造の一方で、南アフリカには依然として地域間の経済格差が残されている。
都市部と農村部、白人と黒人との間の所得格差、教育・インフラへのアクセスの違いなど、制度的・構造的な障壁が経済成長の足かせとなっている。
また、エネルギー不足、電力供給の不安定さ、労働争議、土地改革の進展遅れなど、解決すべき課題は多い。
だがその一方で、南アフリカには制度的基盤と資源的優位性が存在しており、これらを活用することで持続的成長へと転換する可能性もまた大きい。
南アフリカの産業構造は、一次産業から第三次産業にわたる多層的な展開を見せており、それぞれの分野が互いに補完し合いながら、アフリカ大陸全体を牽引する経済エンジンとしての役割を果たしているのである。