ウズベキスタンと周辺国の関係──水・資源・安全保障が交差する地政学の心臓部。中央アジアの「ハブ国家」として緊張から協調へ

 

ウズベキスタンは中央アジアの心臓部に位置し、5つの国と接する地政学上の要衝である。

歴史的なしがらみと民族的多様性を抱えつつも、近年は周辺国との協調と経済統合を軸に外交政策を転換。

カザフスタンやタジキスタン、キルギスとの経済・水資源・物流協力を進め、アフガニスタンとの国際輸送回廊構想も推進。

ウズベキスタンは中央アジアの平和と発展を支える「ハブ国家」としての地位を確立しつつある。

中央アジアの「ハブ国家」としての自負

ウズベキスタンは中央アジアのど真ん中に位置し、5つの国と陸続きで接している。

北と北西にカザフスタン、北東にキルギス、南東にタジキスタン、南西にトルクメニスタン、そして南にアフガニスタンという地政学的に非常に複雑な隣接関係を持っている。

これらの国々は歴史、民族、宗教、経済、自然資源といったあらゆる側面でウズベキスタンと深く絡み合っており、その外交関係は常に安定と緊張の間を揺れ動いてきた。

 

独立当初のウズベキスタンは、カリモフ政権の強権的かつ自立重視の方針のもと、周辺国との関係においてもしばしば「警戒」や「主導性」を優先する姿勢を取っていた。

しかし、2016年のミルジヨーエフ政権の発足以降は、近隣諸国との協調と経済統合を軸にした外交姿勢へと大きく方向転換している。

現在では、中央アジア域内の信頼醸成と平和的共存の要として、ウズベキスタンは再評価されつつある。

カザフスタン──最大の貿易相手国と「兄弟国家」関係

カザフスタンとは、歴史的にも文化的にも共通点が多く、「トルコ語系兄弟国家」としてのつながりを持っている。

人口や面積においてカザフスタンの方が大国であるが、経済面での依存関係は相互的であり、ウズベキスタンにとっては最大の貿易相手国でもある。

 

エネルギー、機械部品、食品などの相互輸出入に加えて、鉄道網の整備によって物流連携が急速に進んでいる。

特に中国との「一帯一路」構想を背景に、ウズベキスタン~カザフスタン~中国を結ぶトランジット回廊の整備は重要課題であり、両国はインフラ協力を強化している。

 

一方で、水資源やエネルギー料金の問題など、利害が対立する分野も存在する。

だが、これまでの関係はおおむね安定的に推移しており、中央アジアの経済統合を進める上で両国の連携は不可欠なものとなっている。

タジキスタン──水資源と民族の微妙なバランス

ウズベキスタンとタジキスタンの関係は、長らく緊張と対立の歴史に彩られてきた。

とくにタジキスタンのロゴン・ダム建設をめぐる水資源問題は、両国関係に深刻な影を落としてきた。

上流に位置するタジキスタンが水をせき止めることで、下流のウズベキスタンの農業灌漑に影響を及ぼす構図は、国家間の不信感を根深いものにしていた。

 

また、ブハラやサマルカンドなど、タジク系住民が多く住む地域を抱えるウズベキスタンでは、民族的な軋轢も過去に存在していた。

教育、言語、文化の扱いをめぐる問題は、内政と外交の狭間で常に調整が求められてきた。

 

しかしながら、2016年以降の外交リセットによって状況は大きく変わった。

国境通過の自由化、直行便の再開、通商協定の締結など、両国は関係正常化に大きく舵を切っており、経済連携と人的交流が徐々に回復している。

現在では、共同発電所建設や観光振興など、協力分野が拡大している。

キルギス──越境経済と治安の課題

キルギスとの関係は、経済的依存と国境紛争の間で揺れ動いてきた。

特にフェルガナ盆地をめぐる国境線は歴史的に曖昧であり、住民間の土地利用や水利をめぐる摩擦が断続的に発生している。

一部地域では越境する交通や物流が頻繁であるにもかかわらず、行政上の統制が不十分なことが摩擦の温床となってきた。

 

一方で、キルギス国内にはウズベク系住民が多数存在しており、2010年の南部オシ市における民族衝突では、両国関係が一時的に極度に悪化した。

ただし、その後の調停努力や民間レベルの交流によって関係は修復されつつあり、現在では教育や医療の分野で協力が進んでいる。

 

キルギスとの関係には、経済インフラの連携や観光ルートの共同開発といった可能性も秘めており、相互信頼を築く努力が引き続き重要である。

トルクメニスタン──閉鎖国家との静かな協調

トルクメニスタンは、中央アジアにおいて最も閉鎖的かつ中立的な外交姿勢を貫いている国家であり、ウズベキスタンとの関係も限定的である。

両国ともに旧ソ連の綿花地帯として設計され、同じくエネルギー資源を豊富に持つ国同士であるが、経済的な補完関係は乏しい。

 

しかし、近年は天然ガスの輸出ルートや鉄道貨物の接続をめぐって、徐々に協力の芽が生まれている。

カスピ海を経由した輸送インフラ整備は、トルクメニスタンが持つ中立外交政策とも矛盾しないため、地域的な経済回廊構想において重要なピースとなり得る。

 

また、アラル海環境問題や砂漠化対策といった自然環境を共有する両国にとって、国境を越えた環境協力は今後の重要課題の一つである。

アフガニスタン──脅威と機会の隣人

ウズベキスタンとアフガニスタンは、最も複雑な関係を抱える隣国同士である。

ウズベキスタンは安全保障の観点から、アフガニスタンの政情不安を自国の脅威とみなしてきた。

タリバン政権の復権以降も、一貫して「対話と実務的関与」という現実的な外交姿勢をとっている点が特徴である。

 

特に注目すべきは、鉄道インフラの整備を通じた連結政策である。

ウズベキスタンはテレメズからマザーリシャリーフ、さらにはカーブルを経由してパキスタンに至る国際輸送回廊構想を掲げており、アフガニスタンを「橋渡しの国」とすることで、南アジア市場との結節点を形成しようとしている。

 

加えて、アフガニスタン北部にはウズベク系の少数民族が居住しており、歴史的・文化的なつながりもある。

このような背景から、ウズベキスタンはアフガニスタン安定化のための仲介者として、国際的にも一定の役割を果たしつつある。

地域機構と多国間協力への積極関与

ウズベキスタンは、周辺国との関係を強化する上で、地域機構を積極的に活用している。

CIS(独立国家共同体)やSCO(上海協力機構)、中央アジア地域経済協力(CAREC)など、多国間の枠組みへの加盟を通じて、貿易、治安、エネルギー、水資源、交通インフラなどの問題に取り組んでいる。

 

とりわけ、SCOではロシア、中国、インドなどの大国との調整役としても機能しており、地域の安定と発展の要として存在感を増している。

また、トルクメニスタンを除く中央アジア4カ国の首脳会談も定期的に開催されており、「中央アジア内の自律的協調メカニズム」として注目されている。

緊張の時代を超えて、協調の時代へ

20世紀末のウズベキスタン外交は、安全保障と自国優先主義に重点を置いた孤立型の姿勢であった。

しかし、21世紀に入ってからのウズベキスタンは、明確に「協調と経済主導」の外交政策へと転換している。

これは単なる方向転換ではなく、国家の存続と発展に不可欠な戦略的選択でもある。

 

周辺国との関係は、時に複雑で、歴史的なしがらみを伴う。

しかし、地域統合の可能性、経済的補完性、多民族的な共生の伝統を考えれば、ウズベキスタンが果たす役割はますます重要になっていくだろう。

地政学の心臓部に位置するこの国の未来は、周辺国との連携と共にある。

 

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