ウズベキスタンの経済は、旧ソ連時代の計画経済の影響を受けつつも、独立後、急速な改革と発展を遂げてきた。
特に、ミルジヨーエフ政権下では農業依存から脱却し、産業多角化を進める中で新たな経済エンジンとしてIT産業や観光業が注目されている。
観光業も急成長しており、文化遺産や自然景観を活かした新たなエコツーリズムの需要も高まっている。
加えて、民間主導の改革と外国投資の導入が進み、自由化と国際化が進行中だ。
ウズベキスタン経済の今後は、伝統的な産業に加え、次世代産業の発展にかかっている。
ウズベキスタン経済の地平

旧ソ連的計画経済の残像と自立への歩み
ウズベキスタンの産業構造を理解するには、旧ソ連時代からの経済的背景を無視することはできない。
ソ連時代、この国は「綿花の一大供給地」として設計され、国土の大部分は灌漑による農地とされ、綿花単作に近い構造が強いられた。
モノカルチャー経済のリスクは当時から認識されていたが、中央政府の指導のもとで他の作物や産業はほとんど育成されることがなかった。
1991年の独立以降、ウズベキスタン政府は「自己完結型の経済発展」と「輸出志向の多角化」を目指す政策へと転換する。
しかしながら、国家主導の強い統制経済の名残は根強く、真の意味での市場化には時間を要した。
それでも近年、特にミルジヨーエフ政権以降は民間セクターの育成と国際投資の導入が進展し、経済構造には徐々に柔軟性が生まれつつある。
綿花と農業──かつての「白い金」、いまなお健在
ウズベキスタンの農業の象徴は、やはり綿花である。
かつてソ連時代には「白い金(White Gold)」とまで呼ばれ、国家収入の柱であった。
現在も世界第六位の綿花生産国であり、国土のおよそ40%は農業用地に割かれている。
とくにフェルガナ盆地やシルダリヤ川流域は肥沃な土地であり、灌漑設備も整っている。
しかし21世紀に入ってからは、綿花依存への懸念とアラル海の干上がり問題への対応として、徐々に作物の多様化が図られるようになった。
小麦、トウモロコシ、ジャガイモなどの穀類や、リンゴ、メロン、ザクロ、ナッツ類などの果樹も積極的に生産されるようになり、国内消費と輸出の双方を支えている。
特にドライフルーツや野菜加工品はロシア、トルコ、中国などへの輸出が好調で、農業分野は今後も外貨獲得源として注目される分野である。
また、これまで問題視されていた「児童労働・強制労働」も、国際社会の圧力と国内改革によって大きく改善されている。
ILO(国際労働機関)の調査でも、国家による強制動員の撲滅が報告され、倫理的にも持続可能な農業への転換が進んでいる点は特筆に値する。
地下資源──天然ガスと金が支える鉱業国家
農業に次ぐウズベキスタンの主力産業は、圧倒的に資源産業である。
天然ガスは同国における最大の輸出品であり、中央アジアのエネルギー供給地としての役割を担っている。
ガス田はウルゲンチやブハラ周辺に点在し、旧ソ連のパイプラインネットワークを活用した対ロ輸出、さらには中国への供給も行われている。
鉱業資源の中で特筆すべきは金である。
ウズベキスタンは世界第7位の金産出国であり、その中心となるのがムルンタウ鉱山である。
この鉱山はソ連時代から稼働しており、露天掘りとしては世界最大規模を誇る。
その他にも、ウラン、銅、鉛、モリブデンといった希少資源が採掘されており、国家の財政を下支えしている。
ウズベキスタン政府はこれまで鉱業分野を厳格に国営管理してきたが、近年は外国資本の部分開放や民間の参入を模索するようになった。
これにより、鉱業の近代化や環境負荷の軽減といった側面でも新たな改善が期待されている。
実際、2020年代に入ってからはいくつかの欧州企業や中国系企業が鉱山開発プロジェクトに参画し、外資導入と技術革新の流れが本格化している。
繊維・衣料産業──綿花から製品へ、産業の付加価値化
長年にわたり「綿花の輸出国」であったウズベキスタンは、次なる段階として「綿花の加工国」への転換を急いでいる。
国内には紡績工場や縫製工場が多数設立され、綿花から糸・布・衣料品へと付加価値を高めるサプライチェーンが国内で完結しつつある。
特に縫製業は若年層女性の雇用を生み出す労働集約型産業として注目されており、国家としても女性の経済参加と地方の雇用創出を兼ねた戦略分野に位置づけている。
輸出先はロシア、カザフスタン、トルコ、韓国などが中心で、デニム製品やTシャツ、下着などの軽衣料品が主力である。
また、最近では「ウズベク産コットンを使用したエシカルファッション」への関心も高まり、欧州のアパレルブランドが現地との連携を模索する動きも出てきている。
これにより、単なる生産拠点ではなく、ブランド価値を生み出す地域としての評価も高まりつつある。
エネルギーと重工業──内需と近代化のバランサー
ウズベキスタンは、天然ガスの生産国であると同時に、国内需要の大きなエネルギー消費国でもある。
電力は主にガス火力発電によって賄われており、産業活動における安定供給が国家戦略の根幹をなしている。
一部には太陽光や風力などの再生可能エネルギー導入の動きもあるが、現状ではインフラ整備の段階にとどまっている。
重工業については、旧ソ連時代から続く自動車組立や航空機整備、機械部品の製造などが中心となる。
ナマンガンやタシュケントでは機械系の産業団地が稼働しており、韓国や中国からの投資により近代化が進んでいる。
特に韓国の「Daewoo(デウ)」との合弁で立ち上げられたGMウズベキスタンは、自動車製造分野で国内外の市場に製品を供給している。
IT・観光・スタートアップ──新時代の芽吹き
ミルジヨーエフ政権は、伝統産業のみに頼らない「新たな成長エンジン」の確立を目指している。
その中核として掲げられているのが、IT産業と観光業である。
IT分野では「Tashkent City」や「Digital Uzbekistan 2030」構想のもと、プログラミング教育やスタートアップ支援が進められており、インドやシンガポールのモデルを参考にした人材育成が本格化している。
一方の観光業は、文化遺産・自然景観・イスラム建築といった既存資源に加え、イベントやエコツーリズムなど新しいテーマを融合させることで、年間700万人超の訪問者を受け入れる産業へと成長した。
観光が生む外貨収入は既に天然ガスに次ぐ規模へと拡大しており、ホスピタリティ教育や航空インフラ整備など関連分野も波及的に発展している。
経済改革と民間主導へのシフト
ウズベキスタンの経済は今、国家主導型から市場主導型への過渡期にある。
かつては国営企業と中央政府の管理が全産業に及んでいたが、現在では特定分野を中心に民営化が進行中である。
金融、運輸、小売などにも外国資本が参入しつつあり、自由化と国際化は確実に進んでいる。
もっとも、インフレ、通貨不安、官僚主義といった課題も根強く、経済の持続的成長には制度面の整備が欠かせない。
それでも、農業、資源、製造業、サービス産業のバランスを取りながら発展を遂げるウズベキスタンの姿は、中央アジア全体にとってもモデルとなり得る存在である。
ウズベキスタンの魅力とは?|中央アジアの心臓部。歴史・文化・経済を探る。サマルカンドの光、ブハラの風とシルクロードの遺産