ウズベキスタンは、1991年の独立以来、権威主義的な体制が続いていたが、2016年にシャフカト・ミルジヨーエフが政権を握り、劇的な改革の波が訪れた。
特に内政と経済の開放が顕著であり、通貨スムの変動相場制導入や外資規制緩和が評価されている。
しかし、政治的自由の拡大は遅々としており、報道の自由や司法の独立性には依然として問題が残っている。
市民社会の成熟も進行中であるものの、NGO活動の規制や政府の監視は厳しく、真の民主化には長い道のりが予想される。
ウズベキスタンは、改革と権威主義の間で揺れる中、次なるステップに向けてその未来を模索している。
改革の進展と共に、国際社会はその民主化の行方に注目している。
ウズベキスタンの制度と内政

単一制共和制の枠組みとその変遷
ウズベキスタンは1991年のソビエト連邦からの独立以来、「単一制準大統領共和制」という体制をとってきた。
国家元首である大統領が強大な権限を持つ一方で、立法機関であるオリヤ・マジリスは上院(元老院)と下院(立法院)の二院制となっており、一定の抑制と均衡が制度上は確保されている。
独立直後から2016年に亡くなるまで、初代大統領イスラム・カリモフが権威主義的な支配を維持した。
選挙は形式的に実施されたが、反体制派の排除や報道機関への検閲が常態化しており、民主主義とは名ばかりの構造であった。
特に2005年のアンディジャン事件では治安部隊が民衆に発砲し、多数の死者を出したとされるが、事件の全容は今も不明なままである。
その後を継いだのが、当時の首相だったシャフカト・ミルジヨーエフである。
彼は当初、カリモフ路線の継承者と目されていたが、政権発足後は驚くほどの改革を打ち出し、「脱・カリモフ路線」へと大きく舵を切ることとなる。
ミルジヨーエフ時代の改革の波
ミルジヨーエフ政権下における最も顕著な変化は、内政と経済の「開放」である。
長らく外資規制や通貨両替制限、言論統制といった壁に囲まれていたウズベキスタンに対し、彼は段階的な自由化と市場経済化を進めた。
まず為替管理が見直され、2017年には通貨スムの変動相場制が導入された。
外国人投資家にとって参入障壁であった外貨取引が大幅に緩和され、ビジネス環境が改善されたことは、国内外で高く評価された。
また、観光業や農業、エネルギー分野における規制緩和も進み、経済の多様化と雇用創出に寄与している。
加えて、司法改革や汚職対策も政権の優先課題とされた。
裁判所の独立性を高める制度改革が図られ、長年にわたり続いてきた「自白の強要」や「冤罪」の温床とされる体質にもメスが入れられている。
ただし、制度上の改革は進んでいても、実務レベルでの慣習や官僚文化の刷新には時間がかかっているのが実情である。
表現の自由と市民社会の現在地
ミルジヨーエフ政権の改革は「脱権威主義」にも及んでいる。
報道や表現の自由が徐々に拡大され、政府への批判的な言論も一部メディアでは許容されるようになってきた。
ソ連以来続く国家主導型の報道体制に風穴を開けた象徴的な出来事として、2018年には複数のブロガーや活動家が公共政策を巡って公開討論を行うシーンが国営放送で流れ、国民に大きな驚きを与えた。
しかしながら、検閲の完全撤廃には至っておらず、現在もインターネットの一部アクセス制限や報道内容の自己検閲が残っている。
YouTubeやTelegramなどのSNSは拡大しているが、当局の監視の目は依然として厳しい。
市民社会の成熟という意味では、NGOや非営利団体の活動に対しては依然として慎重な監視が続いており、外国資金を受け取る団体に対しては許可制が敷かれるなど、国際的な水準からはまだ距離がある。
政治的な自由の拡大と実務的な制度運用との乖離が、この国の民主化過程の複雑さを象徴している。
教育と社会福祉──高識字率の陰で
ウズベキスタンは旧ソ連の教育制度を継承しており、識字率はほぼ100%という高水準を維持している。
初等・中等教育は義務化されており、全国に広く学校が整備されている点は注目に値する。
特に理数系教育やロシア語教育の基盤がしっかりしていることが、近年のIT技術者や医療人材の育成にも寄与している。
一方で、地方と都市部の格差は深刻である。
農村部では教員の質や施設整備の遅れが顕著で、都市部との教育環境の差が将来的な社会的格差へとつながる懸念がある。
また、就学率の高い一方で、教育内容が現代の労働市場に必ずしも対応しておらず、高学歴ながら就業に結びつかない若年層の存在も問題視されている。
社会福祉の面では、住宅供給や医療制度の整備が進められているものの、財政制約や人口増加の影響により、特に低所得層向けサービスは不十分である。
特に老朽化した公共住宅や医療インフラの再構築が急務であり、これに対する政府の対応が問われている。
権威主義からの脱却は道半ば
ウズベキスタンの制度改革は、権威主義体制から民主化へと向かう「過渡期」の道を歩んでいる。
選挙制度の見直しや政党の多様化が進められているが、依然として与党系政党が支配的であり、実質的な権力集中は続いている。
国民による直接的な政治参加の機会も限定されており、真の意味での民主的プロセスの確立には時間がかかる。
国際社会からは一定の評価を得ている一方で、人権状況や報道の自由、司法の独立性に関する批判も根強い。
例えば国際NGO「フリーダム・ハウス」は、同国を「部分的に自由」と分類し、前進と課題が同居する状況を指摘している。
総じて、ウズベキスタンは制度的には大きな変化を遂げているが、内政の基盤を本質的に民主化するには、さらなる市民社会の成長と透明性の高いガバナンスが必要不可欠だと言える。
改革の流れが一過性の演出で終わるのか、制度として定着するのか。
ウズベキスタンの次なる一手に、世界は注目している。
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