パキスタンの経済は、古くから農業に支えられ、綿花や米といった作物が国内外で重要な役割を果たしている。
加えて、繊維・縫製業は国民的産業として雇用と輸出の柱となり、鉱業やエネルギー資源も地下に豊かな富を抱える。
近年ではCPECを通じたインフラ整備やICT、観光分野の発展が経済の多角化を後押ししており、若年層の活力と投資環境の改善が今後の成長を支える鍵となる。

農業が支える国民の生活と雇用
パキスタン経済の基盤は依然として農業にある。
全就業人口の約3割が農業に従事し、GDPの約5分の1を担っている。
特に重要な作物が綿花・小麦・米・サトウキビであり、このうち綿花は繊維産業と直結する「戦略的作物」とされる。
綿花は世界でも有数の生産国の一つであり、原材料としての重要性は非常に高い。
また、小麦と米は国内消費の主食としてだけでなく、輸出品でもある。
バスマティ米など、香り高い品種は中東や欧米市場でも人気があり、ブランド価値が年々高まっている。
畜産業も地味ながら国民の生活に密着しており、牛乳や肉、皮革の生産も重要な分野だ。
しかし、灌漑水への依存や気候変動の影響、非効率な土地管理、農業ローン制度の整備不足など、構造的課題は依然として残っている。
農業の近代化と気候変動への耐性をどう高めるかが、今後の発展の鍵となる。
繊維・縫製──雇用と輸出の柱
パキスタンの工業部門で最大の規模を誇るのが繊維・縫製業である。
原材料の綿花を自国で確保できる強みを活かし、紡績・織布・縫製までを一貫して国内で賄うサプライチェーンを構築している。
この産業はGDPの8?9%を占め、労働力人口の約24%が関与しており、まさに「国民的産業」とも呼べる存在である。
特にカラチやファイサラバード、ラホールなどの都市では大規模な縫製工場が稼働しており、欧米のファストファッションブランドとも取り引きがある。
一方で、近年はバングラデシュやベトナムといったライバル国の台頭により競争が激化しており、品質向上やサステナビリティ対応、生産効率化が業界内で急務となっている。
鉱業とエネルギー資源──地下に眠る富の活用
パキスタンの地中には、多くの天然資源が眠っている。
石炭、天然ガス、銅、金、鉄鉱石、塩、石灰石などが産出されており、中でもバローチスターン州には世界有数の銅・金鉱山「レコ・ディック(Reko Diq)」が存在する。
また、シンド州のタール炭田は近年、発電用の石炭資源として注目を集めている。
これらの資源はエネルギー安全保障や外貨獲得の要であり、国内の発電能力増強や輸出促進にも寄与している。
エネルギー関連では、カラチ近郊の天然ガス田や水力発電プロジェクト、さらには原子力発電所の整備も進んでいるが、依然として電力供給は不安定で、停電や電力不足が大都市でも日常的に発生している。
CPECとインフラ整備──中国との連携で進む現代化
パキスタン経済の近代化を大きく後押ししているのが、中国・パキスタン経済回廊(CPEC)である。
これは中国の「一帯一路」構想の一環として、カシュガルからグワーダル港までを結ぶ巨大なインフラ・経済連携プロジェクトである。
道路、鉄道、港湾、発電所などの建設が行われ、パキスタン国内では1,000億ドルを超える投資が見込まれている。
特に港湾都市グワーダルは、インド洋への海上輸送拠点としての役割が期待されており、アラビア海沿岸の戦略的価値が飛躍的に向上した。
このCPECを通じて、産業地帯や輸送網の整備、物流コストの削減、電力安定供給などが実現しつつあり、パキスタンの産業構造そのものを変えようとしている。
サービス産業と新興分野──ICTと観光の可能性
伝統的な産業だけでなく、ICTや観光といった新興分野も台頭している。
特に都市部ではスタートアップ企業の数が増え、フィンテックやEコマース、エドテックなどに外国資本が流入している。
カラチやラホールにはテクノロジーパークや起業支援施設も設置され、次世代産業として期待が高まっている。
観光産業においては、近年の治安改善を背景に訪問者数が回復傾向にある。
ヒマラヤ山脈やガンダーラ遺跡、ムガル建築、パキスタン料理など、多彩な魅力を活かした観光開発が進行中であり、アドベンチャーツーリズムや文化遺産巡りが国内外から注目を集めている。
経済の課題と展望
パキスタン経済には、慢性的なインフレ、外貨不足、債務問題といった課題が存在する。
政治的不安定さや官僚主義、軍の経済介入も、投資環境を不透明にしている要因の一つだ。
しかしながら、IMFや湾岸諸国、日本・中国などからの支援を活かし、制度改革や構造転換の兆しも見える。
将来的には、人口増と若年層のエネルギーを原動力とし、製造業やデジタル産業を中心にした経済成長が期待されている。