エチオピアと周辺国の関係|エリトリアとの戦争と和解、スーダン水問題、ソマリア国境問題、ジブチ港依存とケニア回廊協力まで

アフリカ大陸の北東部に位置するエチオピアは、海に面していない内陸国であるにもかかわらず、周辺地域の政治・経済・安全保障の動向に大きな影響を与えてきた。

北はエリトリア、西はスーダンと南スーダン、東はジブチとソマリア、南はケニアという六か国と国境を接しており、その関係性は歴史的背景から地政学的な対立、経済的協力まで多岐にわたる。

特にナイル川の水資源を巡る外交交渉や、地域紛争、港湾アクセスの必要性など、複数の要因が絡み合うエチオピアの対外関係は、アフリカにおける現代的な国家間関係の縮図といっても過言ではない。

エリトリアとの愛憎劇:独立、戦争、そして脆弱な和解

最も複雑かつ感情的な関係を有するのが北隣のエリトリアである。

エリトリアはかつてエチオピアの一部であったが、1993年の住民投票により独立を果たした。

しかしその後、1998年から2000年にかけて国境紛争が勃発し、双方で約7万人以上の死者を出す泥沼の戦争となった。

国境線を巡る緊張はその後もくすぶり続け、和平合意に署名してからも対立的な関係が続いた。

 

2018年、アビィ・アハメド首相の登場とともに両国関係は一気に改善へと転じる。

和平協定の再調印は国際社会から歓迎され、アビィ首相はこの功績によりノーベル平和賞を受賞した。

しかしその後、ティグライ紛争を巡ってエリトリアが再び軍事的に関与し、和平の持続可能性には疑問符がつけられている。

表面的な和解の裏には、未解決の歴史的トラウマと相互不信が依然として横たわっているのである。

 

スーダン・南スーダンとの国境とナイル水源を巡る駆け引き

エチオピア西部の隣国であるスーダンおよび南スーダンとの関係もまた、不安定な構図の中にある。

特に焦点となっているのは、「グレート・エチオピアン・ルネッサンス・ダム(GERD)」の建設によるナイル川水源の支配権である。

エチオピアはこの巨大ダムを通じて電力供給の安定と地域経済の活性化を目指してきたが、下流に位置するスーダンとエジプトは水資源の減少を強く懸念している。

 

特にスーダンは、エチオピアとのフェシャガ地域における国境画定問題とも相まって、ダム問題を外交カードとして活用する傾向がある。

一方で南スーダンは相対的に穏健な関係を保っており、武器供与や越境支援などの懸念はあるものの、現在のところ大規模な衝突には至っていない。

 

ソマリアとの国境と民族アイデンティティを巡る難題

東に接するソマリアとの関係もまた、国境を越えた民族構成の問題が複雑化させている。

エチオピア東部のソマリ州にはソマリ人が多数居住しており、過去には分離独立運動や越境武装勢力によるテロが頻発した。

エチオピア政府は、ソマリア国内の不安定な政情を利用する形で暫定政権への支援や軍事介入を行ってきたが、これが地域の不信感を高める結果にもなっている。

 

2006年以降、アメリカのテロ対策支援と連動してエチオピアはソマリアへの直接介入を強化し、一時はモガディシュにまで軍を展開した。

その後もアル・シャバブなどのイスラム過激派勢力に対する警戒は強く、国境地帯では治安部隊の増強や国際協力による監視体制が継続されている。

 

ジブチとケニア:陸路を補う海路の要衝

内陸国であるエチオピアにとって、海へのアクセスは経済活動の生命線ともいえる。

その中でジブチは最大の貿易窓口として極めて重要な役割を果たしている。

エチオピアの海上輸出入の約95%がジブチ港を経由しており、近年は鉄道・道路網の整備を通じて両国間の物流連携が急速に進んでいる。

 

また、南に接するケニアとも「ラミュ港計画」や「LAPSSET回廊」といった広域経済圏構想の一環としての協力関係を築きつつある。

エチオピアはインフラ投資を通じて、港湾アクセスの多様化と経済依存の分散を図っており、その鍵を握るのがジブチとケニアという二国なのだ。

 

アディスアベバという外交中枢

エチオピアの首都アディスアベバには、アフリカ連合(AU)本部が置かれており、名実ともにアフリカ外交の中枢として機能している。

この地理的・象徴的優位性を背景に、エチオピアは地域内の調停役やリーダーシップを志向してきた。

ナイル水争いやエリトリアとの和平交渉、ソマリア安定化支援など、あらゆる地域課題において発言力を持つ国家として、対外的な影響力を強めている。

 

また、アフリカ自由貿易圏(AfCFTA)への積極参加を通じ、経済統合においても先導的な立場を取る姿勢が目立つようになってきた。

 

結びにかえて:地域安定の鍵を握る国家

エチオピアは歴史的・文化的に誇り高い国家であると同時に、周辺国との関係において多くの摩擦と挑戦を抱えている。

しかし、その地政学的ポジションと人口規模、経済潜在力、そして外交的な役割を考慮すれば、アフリカ大陸の安定と成長の鍵を握る国家でもある。

今後、エチオピアが周辺国といかにして共存・共栄の道を探るのか。

その舵取りは、アフリカの未来像を大きく左右するに違いない。

 

エチオピアの魅力と実力―首都アディスアベバから歴史・文化・経済。アフリカ国際外交の舞台でコーヒーの発祥地。

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