チリは南米随一の経済安定国とされ、同時に世界市場で特定の産業において圧倒的な存在感を放つ国家でもある。
特に鉱業、とりわけ銅の生産においては、世界第1位の生産国として国際的な地位を築いている。
だが、それだけではない。
豊かな自然環境と縦に長い国土を活かし、農業、漁業、林業、さらには近年急成長を見せるITや再生可能エネルギー分野も含め、チリ経済は多角的に発展している。
南米チリの自然とともに発展する経済モデル。

鉱業──世界の銅を動かすリーダー
チリの経済を語る上で、まず挙げられるのが銅鉱業である。
チリには世界最大の露天掘り銅鉱山「チュキカマタ鉱山」や「エスコンディダ鉱山」があり、国家の輸出収入の約50%近くをこの分野が担っている。
チリの銅は主に中国、日本、アメリカ合衆国、韓国などに輸出され、電線や建材、半導体といったハイテク分野にも広く使われている。
この銅鉱業を運営しているのが国営企業CODELCO(コデルコ)であり、同社は世界最大の銅生産企業として国の財政を支えている存在だ。
一方で、国際資本による民間鉱山も増加しており、外資とのバランスや環境問題への対応も近年の課題となっている。
また、銅以外にもリチウムやモリブデン、銀、金といった鉱物資源が豊富に存在しており、特に電気自動車や再生可能エネルギー分野に不可欠なリチウムは「21世紀の石油」とも呼ばれ、アタカマ塩原からの採取が注目されている。
農業・畜産業──輸出型農業の成功例
南北に約4300キロメートルに及ぶ国土と、多様な気候帯を活かした農業は、チリのもう一つの強みである。
特に中央部の地中海性気候地帯は、果樹栽培やワイン生産に最適とされており、世界的に高い評価を受けるワインやブドウ、リンゴ、ブルーベリー、サクランボなどが盛んに生産されている。
チリワインは近年、日本を含む世界中で評価が高まっており、価格と品質のバランスに優れた「コスパワイン」の代表格として市場に定着している。
コンチャ・イ・トロやサンタ・リタなどの大手ワイナリーは国際的な品評会でも多くの賞を受けている。
また、乳製品や肉類の生産も拡大しており、特に南部では牛肉やラム肉の品質向上が進んでいる。
こうした農畜産物は中国、アメリカ、ブラジル、そして日本を含むアジア諸国への輸出が主な市場となっている。
漁業・水産業──太平洋が育む豊かな資源
南太平洋に面したチリは、漁業資源も豊富である。
イワシ、アジ、アンチョビなどの漁獲量は世界的にも上位に入り、特に魚粉や魚油として加工された製品が輸出に回される。
また、サーモンの養殖においては、ノルウェーに次いで世界第2位の生産国であり、日本への輸出も多く見られる。
サーモン養殖はチリ南部のパタゴニア地域で盛んに行われており、低水温と清浄な海域が高品質な養殖環境を提供している。
ただし、近年では環境問題や病気、労働環境に関する課題も指摘されており、持続可能な漁業の実現が求められている。
林業・パルプ産業──再植林の模範国
チリは森林面積が国土の1/5を占めており、特にユーカリや松の商業用植林が多い。
これにより、製紙やパルプ産業が発展しており、チリ製の紙製品や建材は南米全域やアジアに輸出されている。
林業は国策として再植林が進められた分野であり、持続可能な森林経営のモデルケースとして国際的に注目されている一方で、先住民の土地権利問題や生物多様性の保全をめぐる課題も残る。
サービス産業と再生可能エネルギー分野の台頭
近年のチリでは、鉱業や農業に次ぐ柱として、サービス産業と再生可能エネルギー分野が台頭してきている。
観光、教育、金融、IT関連のスタートアップなどが成長し、特に首都サンティアゴを中心にデジタル経済の基盤が整いつつある。
また、チリ北部のアタカマ砂漠は世界でも最も日射量が多い地域のひとつであり、太陽光発電に理想的な環境を有している。
国家としても再生可能エネルギー比率を高める目標を掲げており、2040年までに石炭火力発電所をすべて閉鎖する計画も進行中である。
外需依存と国内課題の狭間で
このように、チリは外需に強く依存した産業構造を持つがゆえに、国際市場の価格変動や為替の影響を受けやすいという脆弱性も抱えている。
また、資源への過度な依存からの脱却と、高付加価値産業の育成が今後の課題とされる。
それでも、チリは自由貿易協定を世界60カ国以上と結んでおり、国際経済の波に柔軟に対応しながら発展を続ける「開かれた経済国家」として、南米でも特異な存在感を放ち続けている。
チリのトップページ:銅と星空の国、チリ──南米の細長き大地が秘める多様性と魅力、アタカマ砂漠からワイン・世界遺産と民主化。